アメリカにはギフテッド(優れた才能を持つ子ども)のための学校がいくつもあります。
日本ではギフテッド校はあまり知られていないのが現状ですが、先進国では、ギフテッドの子どもたちへの教育を国を挙げて取り組んでいます。
今回はアメリカのギフテッド校の中でも公立学校として知られている、ネバタ州にあるデビッドソンアカデミーについて紹介します。
目次
アメリカ初!公立ギフテッド校デビッドソンアカデミー
http://news.ditd.org/Academy/June_2017_web.html
ネバタ州にあるデビッドソンアカデミー(DavidsonAcademy)はギフテッドのための公立学校です。
デビッドソンアカデミーは、ネバダ州立リノ校のキャンパス内にあり、大学と共有して使用できるスペースや施設もあります。
デビッドソンアカデミーは2006年に中高生(アメリカでいう6年生から12年生)のための初の無料公立ギフテッド校として開校しました。
公立学校ということもあり、授業料は無料です。
18歳未満のIQ145以上のギフテッドの子どもたちが対象となっているギフテッドスクールです。
IQ145以上ということでかなりハイレベルなギフテッド校になります。
アメリカのネットメディア「デイリービースト(DAILY BEAST)」では、”アメリカのトップ高校2014の上位30校”にも選ばれています。
ミッションと目標
デビッドソンアカデミーではどのような理念を掲げているのでしょうか。
デビッドソンアカデミーのミッションと目標を学校HPより紹介します。
Gifted children range from mildly and moderately to highly and profoundly gifted. Since profoundly gifted children are in the extreme range of intellectual needs, they are often underserved by schools, which must focus on their core mission of serving the majority of their student population.
The mission of the Davidson Academy is to provide profoundly gifted young people an advanced educational opportunity matched to their abilities, strengths and interests.
The goals of the Davidson Academy are:
To provide a Personalized Learning Plan (PLP) that appropriately challenges each student’s abilities, allowing him or her to engage in learning opportunities at a pace and depth consistent with the student’s knowledge, skills and personal motivations;
To allow students the opportunity to develop their talents and skills at an advanced level and be supported by teachers, professors and other experts in their fields of interest;
To provide students an opportunity to learn with intellectual peers;
To provide students a learning environment that fosters integrity, personal responsibility, conscientious citizenship, understanding and an appreciation of individual differences, along with respect for others;
To provide students guidance in identifying and developing their unique talents and abilities, counseling for the college application process, procurement of scholarships, and access to professional areas of interest and career counseling;
To encourage students to develop their talents, abilities and leadership skills in positive ways while in pursuit of knowledge;
To engage parents in the learning process and provide opportunities for understanding and nurturing their children.以下、日本語訳
Davidson Academyの使命は、才能豊かな若者に、能力、強さ、興味に合った高度な教育機会を提供することです。
Davidson Academyの目標は次のとおりです。
- 各生徒の能力に適切に挑戦するパーソナライズラーニングプラン(PLP)を提供し、生徒の知識、スキル、および個人的な動機に沿ったペースで深い学習機会に従うことを可能にする。
- 生徒が上級レベルで才能とスキルを養う機会を与え、教員、教授、その他の専門分野の専門家がその分野でサポートできるようにする。
- 学生に知的な仲間と学ぶ機会を提供する。
- 誠実さ、個人的責任、良心的市民権、理解と個人差の尊重、他者の尊重を育む学習環境を生徒に提供する。
- 学生のユニークな才能と能力の特定と開発、指導、奨学金の調達、興味やキャリアカウンセリングの専門分野へのアクセスの指導を学生に提供する。
- 知識を追求しながら積極的に才能、能力、リーダーシップスキルを育成することを奨励する。
- 両親を学習プロセスに参加させ、子供の理解と育成の機会を提供する。
デビッドソンアカデミーの特徴
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次にデビッドソンアカデミーの特徴を紹介します。ギフテッド校の中でもデビッドソンアカデミーにはどのような特色があるのでしょうか。
1)個人別の学習カリキュラム!PLPを採用
学校が掲げているミッションと目標の中にもありましたが、デビッドソンアカデミーの大きな特徴の1つにPLP(Personalized Learning Plan)があります。
PLP(Personalized Learning Plan)は個人別の学習カリキュラムのことで、個人の能力、ニーズに基づいて、学生、両親、アカデミーの教員とスタッフとで一緒に学習カリキュラムを作成していきます。
デビッドソンアカデミーでは年齢ではなく能力によってグループ化されており、科目ごとにレベル分けされた授業を授けています。
科目によってレベルの差が出るため、得意なものはそれこそ大学レベルのものを学べる環境が用意されています。
デビッドソンアカデミーの標準的なレベルがどれくらいかというと、アメリカの一般的な公立学校の学習と比べるとおよそ3年進んで学習しているようです。
ですので、中学1年生で高校1年生の学習をしているというとイメージしやすいですね。
全校で140名程度ということもあり、細やかな配慮がされていることも人気のひとつです。
2)発達の凸凹2Eのためのプログラムも実施
デビッドソンアカデミーでは、発達や得意不得意の凸凹にも配慮しており、自己管理スキルのサポート体制も整っています。
2Eのギフテッドの子どもたちも在学しており、PLPでカリキュラムを組む際に自己管理プログラムも必要な子には取り入れて計画を立てています。
2Eのギフテッドに対しての支援が配慮されているところも魅力の一つです。
入学のための受験資格は?
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受験資格にはいくつか条件があります。
1)ネバタ州に住んでいること
デビッドソンアカデミーには寮はありません。自宅から毎日通学するスタイルのため、まずはネバタ州に住んでいることが条件となります。
デビッドソンアカデミーで学びたいという想いから家族で他の州から引っ越しをされるご家族もいます。
それだけお子さんのために良い環境で学ばせたいと願う親御さんがいらっしゃるということなんですね。
2)学力における受験資格
受験資格としては、デビッドソンアカデミーが提示している学力スコア基準を満たしていることが必須となります。
・IQテスト
IQ145以上の標準スコア(99.9パーセントタイル)
IQテストはいくつか種類がありますが、求められるのは標準スコアが145以上であるということです。
99.9パーセントタイルとは何かというと、受験者の中で上位0.1%に含まれるという意味です。
つまり IQテストの受験者1000人中トップに入ることが条件として要求されています。
アメリカの一般の学校の中にあるギフテッドクラスの対象となる子どもたちのがおよそ90パーセントタイル。
またデビッドソンアカデミーのように全校ギフテッド校の場合でも97パーセントタイルという学校がある中での99パーセントタイルという数字はかなり高い数字であることが伺えます。
ギフテッド校ではトップクラスの基準です。
・SATまたはACTのテスト
SATとACTはアメリカの大学受験の際に必須となるテストです。
SATは「Scholastic Assessment Test」の略で、主に言語能力(英語力)と数学的思考力に関するテストです。
ACTは「American College Testing Program」の略で、英語、読解、エッセイ、数学、科学の5つのセクションに分かれていてるテストです。
SATもACTも大学受験に必要なテストですので、通常はアメリカの高校3年生が受けるテストになります。
日本でいうセンター試験のようなイメージに近いものです。
大学受験のためのSATまたはACTを受けて、デビッドソンアカデミーが提示しているスコアを満たした子どもたちに受験資格が認められます。
詳しい受験基準については学校ホームページの入学、認定基準をご覧ください。
デビッドソンアカデミー:リノデイスクール – 資格基準
3)書類選考合格後、学力審査へ
スコアレポートとともに、受験の申請をし、書類選考を通過すると、入学のための学力審査が待っています。1日におよぶ学力審査を受け、合否が決まります。
名門校へ2017年卒業生の進学先
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2017年に卒業した生徒たちの進学先もやはり名門校ばかりです。
- マサチューセッツ工科大学
- スタンフォード大学
- ノースウェスタン大学
- ネバダ大学、リノ
- シカゴ大学
- オーバリン・カレッジ
- カリフォルニア大学バークレー校
- バブソン大学
- ヴァンダービルト大学
- オクラホマ大学
- ブラウン大学
- プリンストン大学
- ブリガム・ヤング大学
- セントルイスのワシントン大学
- エジンバラ大学
- ハーバード大学
卒業生の活躍が楽しみですね。
2017年よりオンランスクールがスタート!
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デビッドソンアカデミーでは、2017年より新しくオンラインスクールが開校しました。
オンラインスクールでは、ネバタ州在住でなくてもアメリカなら、どこに住んでいても受けられるようです。
オンラインスクールの受験資格の基準はリノ校の基準と同じ学力が求められますが、ギフテッドの中でもホームスクーラーが多くいるアメリカでは、このようなオンラインスクールのスタイルはニーズに合ったありがたいものです。
2017年から2018年の初学期には、22人の学生が8年生、9年生および10年生のコースに参加します。11年生と12年生のコースについては、2018-2019学年度に追加開校される予定です。
日本からは残念ながら受けることができませんが、こういった学校や教育があるということを多くの方に知っていただけたら嬉しく思います。
世界には様々な教育環境があります。
また、これから日本でもこのような学校ができ、ギフテッド教育が浸透することを願っています。
それでは!