自閉症の少女、ピアノの”音”を使い「言葉」を覚えることに成功

自閉症の少女、ピアノの”音”を使い「言葉」を覚えることに成功

自閉症の子は言葉に関して、理解が難しい。そんなイメージがあるかもしれません。

自閉症の子が言葉を覚え、話す力を後天的に身につけていくことは可能なのでしょうか。


今回は、自閉症のいとこの行動に興味好奇心を掻き立てられた少女が、自閉症の子どもたちに言葉を教えることに成功した、アメリカで起きた実話を紹介します。

のちに、アメリカのサイエンスフェアの研究として発展し、50以上の賞を獲得することになった、ギフテットの少女と自閉症の少女のお話です。

自閉症のいとこに言葉を覚えさせられないかな?

ケイラ(当時14歳)と自閉症のロリーナ(当時6歳)はいとこ同士。
最初のきっかけはささいな思いつきからでした。



自閉症ロリーナの特性とは?

ロリーナが自閉症と診断されたのは5歳の時。そこから特別な教育を受けることになりました。
自閉症の特徴がロリーナにも見られました。
・目を合わせない
・大きな音を嫌い耳をふさぎ、叫ぶ
・ある言葉を繰り返す
・ある言葉に反応してくすくす笑う反響言語
・6歳までに覚えた文字は「L」の1文字だけ。

その一方で
・大抵のことはわずかな時間しか集中できませんが、何時間もの間ひとつのことにこだわり続けることがある。
・ピアノの鍵盤を飽きずに叩き続ける。
・長い髪が好きで、ケイラの髪を触り続ける。
・音楽が好きで、歌ったり、踊ったりはしないものの、じっと耳をそばだてよく笑う。
・以前親戚のおじさんが歌をロリーナに歌ったことがあり、その1年後、メロディーも歌詞もそのまま歌った。

など、こだわり、集中力、抜群の記憶力を見せることがありました。

ケイラの研究のきっかけ

ケイラの研究のきっかけは、
・ロリーナは何を考えているのだろう
・何を言おうとしているのだろう
・1文字アルファベットしか覚えられないのに、1度聞いただけで歌を全て覚えてしまうなんて驚き

というロリーナへの好奇心からでした。ケイラはできないこともあるけれども、ある種の天才性をロリーナへ感じていました。

ふと思いついた『自閉症のいとこに言葉を覚えさせることはできないか』という発想から研究がスタート。

ピアノと音楽が好きなロリーナを見て、音楽を通じてならものを覚えられるのではないか?と考え、音階とアルファベットを結びつけて教えることを思いつきました。

最初の研究。ピアノの鍵盤とアルファベット

ピアノの鍵盤とアルファベット

最初は3つの鍵盤を弾いていただけ。



まずは、26のピアノの鍵盤の白い部分にAからZまでの文字を書いた紙を一枚ずつ貼っていきました。


ケイラはこれは「A」と言って、自閉症のロリーナに鍵盤を押して見せます。


ケイラはすごく楽しそうに「A、P、E」(猿)というアルファベットを貼り付けた鍵盤を鳴らし、ロリーナに何度も見せました。


最初は二人で手を重ねて鍵盤を弾き、4週目でロリーナは一人でA、P、Eの鍵盤を鳴らすようになりました。

ロリーナ、アルファベットを理解!

ある時、ケイラが誤って、A、P、「T」の音を鳴らすと、ロリーナが「それ、違う」と一言。

「それはT、Eの音を弾かなくちゃ。」

ロリーナは驚いたことに、音の違いを言い当て、さらにはケイラの指の動きをただ真似ていたわけではないことがわかりました。

3週間前、「L」しか知らなかったのに、どうやら「A、P、E、T」の4つ文字を覚えているようだということがわかったのです。

ケイラは新しい文字を、新しい音の連なりを試していきました。


「B-E-A-R(クマ)、C-A-T(ネコ)、D-O-G(イヌ)」

ピアノがなくても文字と単語をロリーナが使えるか試すために、動物のステッカーと動物の名前を書いた紙を広げ、ステッカーの動物と名前の書いた紙を一致させてごらんとケイラが言うと、ロリーナはいとも簡単にやってのけてしまいました。

ロリーナはその後わずか半年で、すべてのアルファベットを覚え、ある一定の単語を自分だけで読むようにもなりました。



音とアルファベットをリンクさせたことで、アルファベットを覚え、単語を覚え、単語の意味を理解することができるようになりました。


ケイラは同じ方法で、地域の学校の12の特別支援学級に協力してもらい、ロリーナ以外の自閉症の子どもたちも言葉を覚えることができるのか、試みました。


18人のそのうちの1人、6歳の男の子が半年で、知っている文字は1文字のところからすべてのアルファベットを覚え、本の中の動物の名前を綴れるようになりました。

18人の子どもたちのほとんどが、短期間で文字を覚え、単語が綴れるようになったのです。

特許取得、ことばを覚えるための教育プログラムを開発

その後、ケイラはソフトウェア・プログラムで、パソコンのキーボードを押すとすべてピアノの違う音が出るというものを開発。

画面には動詞が現れます。

今度は、動詞を覚えることができないか、試しました。
プグラミングでイラストにアニメーションをつけたり、よりわかりやすいように工夫をしました。

カルエのイラストが出てきたら、「とぶ」のスペルを打ち込む。そうすると、画面のカエルが飛ぶというプログラムです。

ロリーナはこのプログラムにより、動詞も理解し、綴れるようになりました。

さらにケイラの研究はすすみ、言葉だけではなく、自閉症の子には難しいとされている『感情の理解』まで、プログラムを使って取り組みました。

そして、ロリーナは6つの感情
・うれしい
・かなしい
・おこる
・こわい
・おどろく
・うんざりする
を覚えました。

ケイラが14歳の頃から始まった研究は大学生になってからも続きました。

ケイラはこれらの研究をサイエンスフェアで発表し、その賞金で特許を取り、教育プログラムとして、自閉症の子どもたちの教育に貢献しました。

ここまで研究を進められたのは、サイエンスフェアでの賞や、賞金、奨学金のためではなく、大好きな自閉症のいとこのことをもっと知りたい、心のつながりを持ちたいというところからだったといいます。



自閉症の子は言葉を後天的に覚えることが可能であるということが、証明された研究でした。

自閉症はまだまだ解明されていないことも多いですが、これからさらに研究が進み、こうして道が切り開かれていくことでしょう。

それでは!

自閉症の診断についての詳しい記事はこちら
子どもの発達障害「自閉症診断チェック」

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